ストーリー


玄関を開けるとJSがいた――― 「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました!」 16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の自宅に押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。九歳 「え?、・・・弟子?え?」 「・・・おぼえてません?」 覚えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。ストレートなあいの情熱に、八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していくのだった

第十二局「最後の審判」

温泉旅館ひな鶴にて執り行われる、名人と八一の竜王戦第四局。ここで負ければ、八一は竜王のタイトルを失ってしまう。だが、彼の心は穏やかに澄み渡っていた。将棋史上最大の一戦を、控え室にて注視するあいと銀子、桂香。そして家からネット中継を見守る天衣。対局の行方は、誰にも判らない。師匠の勝利を信じるあいの眼差しに支えられて、八一は運命の一戦に挑む!!
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第十一局「寿」

竜王戦第三局を終え、名人相手に一矢も報いることができない八一は焦るばかり……。熱を出して倒れたあいのことを、いまは思いやる余裕もない。銀子の精一杯の助言すら拒絶してしまうのだった。一人孤独に、部屋に閉じこもって研究に没頭する日々。八一の復活を願って、桂香は自分の対局を見て欲しいとメモを残す。次のマイナビ本戦は、桂香が女流棋士になる大きなチャンス。対局を通じて彼女は、八一に何を伝えようというのか。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第十一局】釈迦堂vs桂香
この対局は平成28年の第42期女流名人戦第2局、▲清水市代女流六段vs△里見香奈女流四冠(当時)の対局を参考棋譜として使用しております。
この対局は桂香が東京に遠征しての対局となります。しかも対局場は東京将棋会館の特別対局室。数々の名勝負が繰り広げられてきた歴史の重みのある対局室です。名人相手の防衛戦で連敗を喫して失意に暮れている八一に盤上で気持ちを見せるため、そして女流棋士の資格を得るために「絶対に負けちゃいけない将棋」との思いを胸に対局に挑んだ桂香ですが、釈迦堂の指し手にリードを奪われて、劣勢に陥ります。
しかし中盤で熱い思いを胸に勝負手を連発した桂香が猛然と追い込みます。図1の局面は終盤戦の秒読みの中、釈迦堂が桂香の王将に▲9四桂と王手を掛けた局面です。この▲9四桂は悪手で、▲7四桂ならば釈迦堂の勝ちでした。▲7四桂以下は△同歩ならば▲6四角成△同竜▲7一銀△同玉▲5三角と攻めつつ先手玉の「詰めろ」を消しておけば良いですし、▲7四桂に△7二玉ならば▲6二角成がぴったりで、いずれも先手の勝ちでした。
実戦は▲9四桂に△8三玉▲4七角△6五歩▲6四角成に△8五歩▲9六玉△9五歩(投了図)と進み、桂香が釈迦堂を即詰みに討ち取りました。
勝利で女流棋士の資格を得た上で、勝つことで棋譜に載せた桂香の想いを八一はしっかりと受け止めて、名人と戦っていく覚悟を決めます。棋譜で想いや生き様を伝えられる桂香は、もう既に立派なプロ棋士としての第一歩を歩んでいると言っても良いでしょうね。

第十一局

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第十局「スピニングドラゴン」

6つのタイトルの永世資格を持つ、神のような絶対王者・名人。その名人が、現・竜王の八一に「挑戦」する竜王戦が開催される。第一局の会場は、常夏の島ハワイ。リゾート気分の前夜祭では、あいの10歳の誕生日も祝われ、師匠に勝って欲しいと願う無邪気なコメントも喝采を浴びる。そして迎えた第一局。名人は予想外の「一手損角換わり」を八一に仕掛けてゆく。この戦法を熟知する八一に、局面は有利かと思われたが……。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第十局】八一vs名人
いよいよ八一の竜王位防衛戦が始まります。この対局は平成20年の第21期竜王戦第1局、渡辺明竜王(当時)vs羽生善治名人(四冠、当時)の対局を参考棋譜として使用しています。
棋界最強の名人を対戦相手に迎えての防衛戦第1局はハワイでの対局となります。竜王戦は第1局を海外対局で行うことも多く、実際に4年前の竜王戦(森内俊之竜王vs糸谷哲郎七段、称号と段位は当時)がハワイのハレクラニホテルで行われました。その対局には私も現地大盤解説の解説者として同行していました。
図1は1日目終了の局面から、2日目に名人の封じ手△2四同歩が指された局面です。八一は穴熊の堅陣に組めたことで作戦勝ちを意識していました。1日目が終わった夜には夜のハワイを散策していると銀子と出会い、デートの様な雰囲気を楽しんでいます。本人がデートと認識していたかは疑問ですが…。
2日目が始まり図1から▲2四同飛△6五歩▲2三角△同金▲同飛成△6六歩▲3三竜と、八一は穴熊の堅さを生かした猛攻を繰り出します。この展開は前日夜に八一が楽勝と考えていた進行でした。しかしそこから△6七歩成▲同金直△6九角▲6八金引△4七角成と図2の局面まで進んでみると、八一は愕然とします。楽勝と思っていた局面が、全然難しい局面だったからです。
実際には図2から▲4五桂△同歩▲4四歩や、▲4五桂打△同歩▲同桂などでほぼ互角の難解な勝負だったのですが、今までに積み重ねてきた得意戦法である一手損角換わり腰掛銀の価値観を根底から否定されたと感じてしまった八一は冷静な判断などできるはずもなく、崩れていきました。そこから気持ちを立て直せずに3連敗を喫してカド番に追い込まれてしまいます。あいにも冷たくあたり、精神的には最悪の状態です。ここから立て直すことができるのでしょうか?

第十局

第十局

第十局

第九局「八月一日」

マイナビ女子オープン予選。気合い充分のあいと天衣は、一回戦で快勝した。あいが次に対局する相手は、女流帝位のタイトル保持者、《捌きのイカヅチ》祭神雷だった。八一に執着し告白の返事を求める雷に、あいは弟子として「お断り」しようと闘志を燃やす。雷とあいの実力差からあいが勝つ未来を想像することができない八一だが、一方であいは、とある理由から今日は絶対に負けられないと心に誓って臨んでいた。はたしてあいは雷を破ることができるのか!?
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第九局】あいvs雷
この対局は平成24年7月4日に行われた第25期竜王戦決勝トーナメント、稲葉陽六段対大石直嗣四段戦(段位はいずれも当時)を参考棋譜として使用しています。
あいの師弟としての八一への愛情と、雷の強くなるために八一と将棋が指したいという歪んだ想い、その二つが盤上でぶつかった天才同士の戦いでもあります。
中盤までは雷が押していて、あいが追い込まれていきますが図1で▲5三金を▲6二金と「押し売りのタダ捨て」をした局面から様相は一変します。この金に対して、玉と金のどちらで取っても王手金取りが掛かり、雷の攻めの拠点である△5五金を取られてしまい、あいの玉が安全になります。予想外の一手に雷は動揺しますが、あいが自分や八一と同じ才能を持っていることを確信して、気持ちを切り変えて戦い続けますが、あいの放つ輝きに押されて疑問手を指してしまいます。
図2であいが▲6五桂と「足し算の攻め」を繰り出した手が強烈で、そのまま押し切りました。
あいの師匠に対する強い想いが勝利を引き寄せることに繋がりました。

第九局

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第八局「はじめての大会」

女流棋界最大の大会「マイナビ女子オープン」のチャレンジマッチに、桂香と共にあいと天衣が参加した。2人は見事に4連勝。弟子たちの成長した姿に、喜びと共に一抹の寂しさを感じる八一だった。その翌日、将棋中継に招かれた八一は、女流棋士・鹿路庭珠代と解説を担当。ところがそのイチャイチャした姿に激怒したあいが、JS研とスタジオに乱入。誤解をまねく問題発言を連発したため、全国に竜王ロリコン疑惑の噂が……!?
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第八局】銀子vs釈迦堂
この棋譜は2009年9月1日の第22期竜王戦挑戦者決定戦第2局、深浦康市王位(当時)vs森内俊之九段戦を使用しています。
東京・原宿にある釈迦堂里奈女流名跡のセレクトショップを訪れた銀子と八一。銀子が釈迦堂と定期的にVSを指している場所に八一も同席しました。
図1は銀子の穴熊に対して、釈迦堂は四間飛車から銀冠に囲った局面です。序盤は定跡どおりでしたが、駒組みが終わった段階で釈迦堂が積極的に仕掛けていきます。それに対して銀子も徹底防戦で耐えますが、厚みを生かした釈迦堂の重く力強い攻めは止まりません。
図2は銀子の6筋からの反撃に対して、釈迦堂が△6三歩と受けた局面です。釈迦堂の金銀5枚の銀冠が異様なオーラを放っています。結局、銀子は釈迦堂の手厚い指し回しに良いところなく押さえ込まれて負かされてしまいました。八一に見守られつつ将棋を指すということで、銀子は八一を意識して力を出し切れなかった、というのがストーリーとして重要な部分のようですね。対局後、釈迦堂セレクトの服に身を包み、慣れないヒールを履いて八一にしがみつく銀子は何とも言えないかわいさでした。銀子推しとしては最高のシーンです。
ちなみに参考棋譜の竜王戦挑戦者決定戦では、122手で後手の森内俊之九段が勝利を収めています。

第八局

第八局

第八局

第七局「十才のわたしへ」

天敵・山刀伐八段との対局を最後まで諦めず、八一は逆転勝利してみせた。しかしその姿は、いまの桂香にはあまりに眩しい。清滝九段の娘として棋士の家に生まれ、幼い頃から将棋に親しんできた彼女は、研修会の年齢制限が迫るなか、いまだ女流棋士になる資格は得られていなかった。自信を喪失して悩む桂香は、かつて自分が書いた古い研究ノートに、ふと目を止める。そこには……。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第七局】桂香vsあい
桂香が主役の回です。
この対局は関西奨励会好局集の横山友紀3級vs中脇隆志3級(2013年5月26日・段級は当時)の一局を使用しています。
研修会での対局で、天衣、あいとの連戦です。天衣に心理戦を仕掛けつつ、完璧な勝利を収めた桂香はその気迫を持ち込んで、あいと対局をしました。先手の桂香が意表の三間飛車から石田流に構えるのを見て、あいも中飛車から左穴熊へ組む、プロの公式戦でも流行の形へと進みます。
図1は中盤戦で▲8五歩に対して△8七馬と香を取った局面です。桂香が優勢な局面ではありますが、あいが穴熊の堅さを生かして「捌き」を意識した攻めを繰り出し続けます。
図1から▲8七同銀△8五飛▲8六銀△6五飛▲7七桂に対して、あいは△6八飛成(図2)と飛車を切り捨てて角を入手しました。更には入手した角を使って桂香の金を取り、飛車角全てを桂香に渡した上で攻め立てます。この辺りは不利な形勢を「捌き」で強引に打開するあいの迫力が指し手から伝わってきます。そして勢いのままに、あいが寄せ切りました。桂香も執念を見せましたが、あいの剛腕が桂香の想いをねじ伏せた一局となりました。この連戦を通して、桂香は何かを掴み新たな成長を遂げていくことでしょうね。今後の桂香から目が離せません。
叡王戦第1局の観戦記の中で白鳥先生が書かれていましたが、桂香のモデルは父親(飯野健二七段)を師匠に持つ飯野愛女流初段です。
本当にたまたまですが、山口恵梨子女流二段と飯野愛女流初段とお会いした時に、アフレコ見学したい、という話になり3人で日程調整をしたところ、第7局の日となりました。
飯野女流は桂香に感情移入してアフレコを見学していました。白鳥先生と飯野女流はこの日が初対面。良い機会だからと収録後の打ち上げでは質問責めしていました。笑

第七局

第七局

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第六局「オールラウンダー」

オールラウンダーにして「両刀使い」の異名を持つ山刀伐仁八段は、八一の天敵。久しぶりの対局で敗北し、3週間後に控えた彼との再戦を前に、八一は「捌きの巨匠(マエストロ)」の異名を持つ生石充王将に教えを請い、同じオールラウンダーをめざす。生石の経営する銭湯兼道場「ゴキゲンの湯」に毎日通い詰め、修行する八一とあい。それは山刀伐に勝つためだけでなく、あの史上最強の天才と呼ばれた名人との戦いに備えるためでもあった。
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【第六局】八一vs生石
この対局はオリジナル棋譜です。
京橋駅近くにある、生石が経営する「ゴキゲンの湯」を訪れた八一とあいが、生石から振り飛車の極意である「捌き」を教わるシーン。生石のゴキゲン中飛車に対して、八一は超速▲4六銀戦法から早い展開で動き、生石の攻めを押さえ込もうとしています。
図1は、押さえ込みを図る八一に対して、生石が予期できない機敏な指し手を繰り出している最中の局面です。図からの△6九飛成は、飛車で守りの金を取った一手で普通なら無理筋ですが、この後に拠点となる△5七歩の存在を軸に△6四角と△6五銀、そして持ち駒を使って華麗な捌きで一気に寄せ切りました。△6九飛成の一手だけが捌きの手ではなく、一連の流れが捌きとなります。
図1の△6九飛成以下は、▲同玉△5六銀▲6八銀△5八金▲同金△同歩成▲同玉△5七歩▲6九玉△5八金▲7八玉△6八金▲同玉△5八歩成▲同玉△5七銀▲6九玉△6七銀成(図2)から俗手と呼ばれる確実な指し手と、華麗な手を織り交ぜつつ八一の玉を丸裸にして寄せ切りました。
生石の美濃囲いは手付かずのままで、八一は手に入れた飛車を使う間もなく負かされてしまいました。

第六局

第六局

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第五局「天衣無縫」

こっそり天衣に稽古 を付けていた現場を、あいに見つかってしまった八一。嘘を付いて同じ年の、しかも“可愛い”女の子を相手に“お稽古”していたことに、あいは激怒。天衣の挑発や八一の失言もあって、あいは「いえ出」して清滝師匠の家に籠もってしまうのだった。あいを連れ戻しに行く八一だったが、事のいきさつを全て理解してくれている師匠の言葉に、あいを暫く師匠の家で預かってもらうことにする。そして町の将棋道場で実践を学び、腕を上げた天衣は、研修会の入会試験を受けることに。
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【第五局】あいvs天衣
この対局は第38回小学生将棋名人戦準決勝、▲伊藤裕紀くん対△岡本詢也くんの対局から棋譜を使用しています。
ちなみに羽生善治竜王・棋聖は第7回の優勝者、渡辺明棋王は第19回の優勝者です。他にも多くのプロ棋士が優勝しています。私も第10回大会で優勝して、その年に奨励会を受験しました。プロ棋士の登竜門ともいえる大会ですね。
さて、本編ではあいが先手側を持って攻めていました。かなり厳しい攻めですが、天衣がギリギリの受けをみせて凌いでいる、という展開です。
実戦では天衣がなんとか受け切って勝ちましたが、実は図1の局面では天衣の玉に詰みがありました。図1から▲4二竜△同飛▲2三金△3一玉▲4三桂△同飛▲3二金(図2)までの7手詰です。「詰みがあるよ」と言われて考えると簡単な7手詰ですが、対局中はあい、天衣、二人ともこの詰み手順はみえていませんでした。対局後に研修会幹事の久留野七段から指摘されて、あいと天衣は愕然とします。特にあいは普段なら気づくであろう簡単な詰みを逃したことに涙が止まりません。あいにとっては残念な敗戦。天衣にとっても詰みを逃してもらった上での勝利。しかしこの対局から得られたものは二人にとって大きな経験となるでしょう。これからライバルとして成長しながら、二人の戦いは続いていくはずです。
どんな戦いとなっていくのか、どんな名勝負をみせてくれるのか、とても楽しみです。

第五局

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第四局「もう一人のあい」

将棋連盟会長・月光聖市九段の頼みで、八一は小学4年生のワガママお嬢様、夜叉神天衣と対面した。ひねくれて高飛車な性格の天衣だが、将棋の腕前はなかなかのもの。ライバルの存在があいを強くすると考えた八一は、密かに天衣を弟子に迎え入れることを決意する。他に弟子を取ると“なぜか”機嫌が悪くなるあいに遠慮して、天衣を新世界の将棋道場で鍛える八一。もちろんそんな怪しい師匠の様子に、あいが気付かないはずもなく……。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第四局】天衣vs八一
天衣と八一の四枚落ち対局でこの棋譜はオリジナルです。
序盤は天衣が定跡通りに駒組みを進めました。しっかりと勉強していることを感じた八一は、天衣にとって少し意地悪な指し方で実力を試します。「綺麗な将棋を指す優等生タイプで、泥臭さや粘り強さを感じない。底が浅い」と感じた八一は、△7六桂と打ち、早めに対局を終わらせようとしました。しかしここから天衣が実力を見せます。
図1の▲6六歩が八一の攻めを呼び込みつつ、受けの力を発揮していくきっかけとなった一手です。二人の実力差を考えると形勢自体は八一の方が圧倒的に良いのですが、もしも同じ棋力の二人で対戦したとすると、下手(したて)側が優勢な局面です。ハンデ戦の醍醐味ですね。天衣の強気の受けに八一は感心します。
図2は天衣が自陣に駒を投入して守備を固めた手に対して、八一が△4七歩と天衣にとって嫌味な一手を指した局面です。実戦は▲4八歩と受けたのですが、ここは嫌味な歩を無視して▲8八歩△7八馬▲7九歩と馬の利きに対処するべきでした。嫌味な歩側が飛車金銀と強い駒で守っているので、優先すべきは馬の利きです。しかし部分的にみると△4七歩に▲4八歩と受ける手は将棋の真理に適っているので、天衣がこの手を選択したのは才能の現れでもあります。▲4八歩以下は△5六歩▲同銀△4六桂と八一が猛攻を見せます。まだまだ天衣にチャンスはありましたが、実力差を考えると八一の攻めを正確に受け止めるのは至難の業です。最後は111手で八一の勝利に終わりましたが、追い込まれてからの天衣の指し手は才能の片鱗を披露した一局でもありました。
年齢と棋力を考えると、天衣の受けの強さは非凡なものがありました。

第四局

第四局

第四局

第三局「研修会試験」

あいが研修会の入会試験を受けることになった。しかも両親が出した試験に全勝という条件をクリアしなければ、将棋を続けることができないのだ。同じJS研の貞任綾乃、プロ棋士・久留野義経七段に勝利して、いよいよ次が最後の勝負。あいの前に立ちはだかったのは、《浪速の白雪姫》の異名を持つ最強の女性、八一の姉弟子・空銀子であった。銀子の容赦ない手が、幼いあいを追い詰める。はたしてあいは勝利することができるのか!?
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第三局】あいvs銀子
この局面は研修会の入会試験で2連勝したあいが3局目に銀子と飛車落ちで対戦した場面です。棋譜はオリジナル作成のものです。
本気の銀子が醸し出すオーラに、あいは飲み込まれて不利に陥りますが途中で開き直ったあいの迫力に銀子はただならぬものを感じます。終盤であいが追い込みましたが、最後は△4七角~△6七香~△4九飛という銀子の3連続王手から即詰みに討ち取られました(図1)。「負けたくない」という想いから、粘って投了を少しでも長引かせたいあいでしたが、最後は王手に対する合い駒を打とうとして駒台に手を伸ばすも、駒が何もないことに気づき投了となりました(投了図)。
棋譜作成時の秘話ですが、駒落ちの対局で3連続王手(3方向からの王手)、しかも最後はあいの持ち駒がない状態での会い駒請求の王手(飛車か角、香車などの遠距離砲での王手)という設定は意外と難易度が高く、何度も試行錯誤して作成した記憶があります。

第三局

第三局

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第二局「弟子のいる日常」

八一に連れて行ってもらった将棋会館であいは、水越澪、貞任綾乃、シャルロット・イゾアールというJSと知り合いになる。同じ頃、公式戦で対局中の八一は神鍋歩夢六段の罠にはまり危機を迎えていた。歩夢の放った龍殺しのゲオルギウス――つまりは「香車」が、竜王・八一に迫る。その傍らであいは、真剣な表情で盤面を見つめていた……。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第二局】八一vs歩夢
この局面は平成23年に行われた第32回JT将棋日本シリーズ決勝戦▲渡辺明竜王(当時)vs△羽生善治二冠(当時)の一局から棋譜を使用しています。
この局面は歩夢が穴熊の堅陣を生かして、飛車を捨てて▲3六香と激しく迫った局面です(図1)。歩夢の厳しい攻めに対して、八一は諦めそうになり負けを認める「思い出王手」(最後に1度くらい王手を掛けてから投了する)を掛けますが、対局室にいたあいの諦めずに盤面を読む姿に気づいて、粘り続けて入玉を達成して最後は飛車2枚が縦に並んで歩夢陣を受けなしに追い込み、402手の長手数で勝利を収めます(投了図)。この402手は公式戦での最多手数の想定でしたが、つい最近に420手で持将棋成立というとてつもない記録が生まれました。作者の想像をリアルで棋士が越えるアニメのような展開です。
ちなみに参考棋譜は128手で羽生善治二冠(当時)が勝利、優勝を果たしました。

参考棋譜:第32回JT将棋日本シリーズ決勝戦
主催:日本将棋連盟 協賛:JT

第二局

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第一局「押しかけ弟子」

将棋界最高のタイトル「竜王」になった16歳の少年・九頭竜八一の家に、彼を「お師匠さま」と慕う9歳でJS(女子小学生)の雛鶴あいが押し掛けてきた!? 当初は追い返そうと考えるのだが、あいの中に才能の片鱗を感じた八一は、清滝師匠の進めもあって、ひとまず春休みの間と区切って彼女を内弟子に迎え入れることになる。こうして竜王・九頭竜八一とその弟子・雛鶴あいの物語が始まるのだった。
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本局の見どころ 解説:野月浩貴八段

【第一局】あいvs八一
この局面は平成26年に行われた第72期名人戦第1局▲森内俊之名人(当時)vs△羽生善治三冠(当時)の一局から棋譜を使用しています。
八一の指した△4七銀に対する▲4四桂が鋭い一手です(図1)。以下△4四同歩▲2五角△3四歩▲4七角と進み、あいが形勢を挽回しました。そこからも難解な局面が続きましたが、八一の勝利となりました。あいの緻密で深い読みに八一が感心した場面です。この場面からも分かるように、あいの終盤力は他の追随を許さないほど高いレベルで、非凡な才能を持っているのが証明されました。
ちなみに参考棋譜の名人戦では178手の大熱戦を後手の羽生三冠(当時)が制しました。

参考棋譜:第72期名人戦第1局
主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟

第一局

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